2012.05.16

十年一昔

先週から今週にかけてはそれなりに忙しかった。民間のコンテンポラリーアートを対象としたNPOとしては老舗に近いAITと、一方で地方型の企業メセナとしては老舗のAAFで講師をお願いされていたこともあって、普段以上に話す内容に苦心していたのである。

9日は、「美術館の社会学」というお題を頂いていて、ネオリベラリズム以降の美術館の行く末を論じて下さいとの事前やりとりがあって、しばらくは何を話せばいいのか途方にくれていた。ただAITの受講者の皆さんは、仕事を持っている社会人でアートに関心がある方が多いというのが僕の印象だったので、「社会学」をする(というかその資格が自分には恐らくない)というよりは、「社会学的に考える」ことを90分程度のレクチャーと30分のディスカッションを通じて共有できればいいなと思っていた。会場で受講者の皆さんと話した感じでは、それなりに考えるきっかけは提供できたようなのでホッとしている。その後スタッフの皆さんと少し飲んで帰宅。僕はAIT受講者ではなかったのだが、僕の学部時代の親しい友人の一人である藤高さん(後にTokyo Art Beatを立ち上げる)がAITに通っていた縁で、こちらでお世話になることになったわけで、彼がAITに通っていたのはそれこそ10年前で僕もその頃はしがない修士の院生だったので、これは最初の十年一昔。

一方で、AAFではお題としてミュージアムのアーカイビングプロセスにおける「ソーシャル・タギング(Social Tagging)」については話して欲しいと言われていたので、基本的にはメディア・テクノロジーの発達とアーカイブの変化を軸に据えながら、それと並行して走る認識論的な変容にも若干目配せするような内容。ただし、アーカイブに絞って論文を書いたことがなかったので、こちらは30分もない短い発表だったけれども、最後までこれでいいのかと試行錯誤しながらの発表。こちらは単純計算して800円相当の話をすればいいことになるので、まあ何とかクリアできていたのではないかと願っている。比較的企画の早い段階から携わらせて頂いていているので、原則毎回会場に詰める予定でいる。こちらは、本当に学部生の時からずっと、仕事を一緒にしているSETENVの入江氏からの依頼でもあり、いい形でこの10年一緒に仕事ができたなあとこちらも十年一昔。もう一人の登壇者であるMDRの編集者の齋藤氏とは、逆に藤高さん回りで出会って十年ということもあり、研究者仲間だけではなくて、その外の世界の方と20代から30代にかけて切磋琢磨する環境は大きかったなと。

後は、僕に関しては本当に就職待ちってことですかね。やっぱりその方が仕事ふりやすいというところがあると思うので。善処します。最後に、AAFに関してはもう少しきちっと再考すべきだなとも感じている。昨年P3の芹沢さんと鼎談した経緯もあるし、決して「都市or地域社会学」的なアートイベントの研究の蓄積も厚いとは言えないので、僕の対象へのアクセスのしやすさを考えるととっとと博論終えて取り組んでも良い課題だと思う。

«
»