ちょっとガンダムネタ続いてる気がしないでもない。先月半ばから読み始めた同タイトル10巻組みを読み終えた。
結構小説版のガンダムも読んでいるんだが。そもそもこの時系列的にはUCの後に来る、『閃光のハサウェイ』は映像化されていないし、『Z』や『V』も小説で読んだ。ただ、従来のガンダムシリーズはどちらかというと映像化されたものを、ノベライズ、もしくは漫画化することが多かったんだけれども、UCに関しては完全に小説がベースだし、分量も圧倒的だったと思う。本筋とはあまり関係ない点だと、途中から挿絵が安彦良和ではなくなったのは残念だった。僕らの世代にとっては、安彦さんとカトキさんあってのガンダムである。
一言で言うと普通に読み物として楽しめたという感想。スペースノイドとアースノイドの優生思想的な背景はいいとしても、ちょっと個人的な背景が性的虐待的なトラウマに集中するのは頂けなかったけど。まあ、これも戦争の負の側面といいたいのだろう。
戦争論的な研究をする人でなければ、一連のガンダム、特にUC(Universal Century)のシリーズに関しては、人類が何故戦い続けるのかの大方の理由は出てきているんだろうと。優生思想(≒見知らぬものへの恐れ)、男のプライド、資源の枯渇、人口爆発と。そして、そしてこの戦争の抑止のための手段として、現在の一定の不平等を認めて自身の運命とともに生きる(現在を凍結し未来を退ける)か、それでも理想的な未来があると信じて戦争を続けその先に戦争を終結させる(現在の前向きな更新として未来を求める)という二つの枠組みに収斂する。これは『コードギアス』でも繰り返されたテーマでもある。で、基本的には、後者を人類は選択すべきだという流れなので、ある意味ではガンダムシリーズは、消極的戦争肯定論とも読まれうる可能性があるし、こちらの方が圧倒的にロマンティックではある。
加えて、UCに関して少し今までと異なるのは、「ニュータイプ論」の行く末を主人公が体験してしまっているところ。つまり、他者を受け入れるということに対して極限まで繊細になった自己は「個」を消失し、集合的意識のなかに溶解してしまうということが示唆されていた。これは一方で、ある意味では『Ghost in the Shell』のテーマ、特にStand Alone Complexの第2シリーズとテーマ的には共有できる部分があると思う。小説では、個に戻りうるようなニュアンスだが、映画シリーズではどのように描かれるのかはとても楽しみ。でも一方で、人のトラウマとかアノミー的な感覚は、肉体を離れては存在しないのだということも強く意識させる作品だったと思う。
いずれにせよ、『Z』に匹敵する名作になる予感。『F91』も映画一発ではなく、せめてこのぐらいの尺で映像化されれば良かったんだが、血統みたいなテーマとしては『UC』と『F91』は連続している部分は当然あるので。
ということで、ユリイカの『鋼の錬金術師』特集が出たばっかりですが、『ガンダム』特集の際には原稿を是非にとアピールしてみる。