2011.07.17

台北、マンチェスター、ハンブルグ

6月が忙しかった反動で、7月は比較的ゆるりと仕事をしている。まあ、アウトプットしっぱなしだったので、漸く本を読める時間が取れるようになったという感じ。とはいえ、7月はほんとここ数年では珍しく2週間で三本の映画を見た。とりあえずは、早稲田松竹さまさまということなんだけれども。

台北の朝、僕は恋をする』 監督:アーヴィン・チェン

元々春先に新宿で公開していたのを見逃して以来ずっと機会を探していたら偶然早稲田松竹で。元々気になっていたのは、監督がエドワード・ヤンの助監督をしていて、さらになぜか制作総指揮がヴィム・ベンダースだったから。台湾の若い世代の監督に興味があったのだけれども、よくよく調べるとご自身は中国系アメリカ人の方らしい。内容的には、ストーリー展開に批評性があるのかどうかは良く分からなかった。但し、絵は素晴らしい。台北を経験した方であれば、こういう美しさを持った町だよねとしみじみ感じられる。『Lost in Translation』を見たときに、東京にノスタルジーを感じたのと近いかも。一観衆としては、それがオリエンタリズムかどうかに言及するのは興を削ぐ。あと、ヒロインの郭采潔が猛烈に魅力的に描かれていた。映画のヒロインにぐっときたの久しぶりだ。

エリックを探して』 監督:ケン・ローチ

二本立ての一本目。ケン・ローチは学部生の頃よく見ていた言わずと知れたイギリスの巨匠の一人。僕は、マイケル・ウインターボトムのファンなので、さほどケン・ローチは好きだったわけではない。ウインターボトムは、BBCのディレクターだったし、ある意味では労働者的なコンテクストを必要以上に強調しないからね。これもしょうもないくたびれた労働者階級の中年の生を愛おしく描いた感じ。ただ、カントナが出てくるのはネタとしていいとして、あのエンディングで彼の生活がいい方向に向かうのがやや疑問だった。ただ、僕が基本的に日本の都市居住者なので、ああいう地域と階級ベースのコミュニティみたいなものにやや憧れがある。やっぱり、パブはPublicのパブなんだよね。居酒屋がそういう機能を果たしているんだろうと思うけど、パブほどの開放性が日本の居酒屋には感じられない。

ソウル・キッチン』 監督:ファティ・アキン

この人も、ヨーロッパの俊英ということでずっと気になっていた。この作品までは、もう少し社会派テイストのものをとっていたらしい。映画としてはよく出来ていたと思う。ただ、上のケン・ローチ的な楽しみ方はできない映画。つまり、僕はロンドン一年半ぐらい経験しているからこそ分かる部分が今のイギリス映画に関してはあるのだと思うんだけど、どうしても、あの映画を見ていると、背景になっているドイツの今を生きるエスニック・マイノリティに目が向いてしまうんだよね。それは、ああ、今はドイツも問題を孕みながら多民族化しているんだよねという、お勉強の追認でしかなくて、そこで住んでいた肌の感覚があるともっとリアルを感じられるのだと思う。ただ、そういう人が生きているという事実は別として、クラブタイムに流れていた、ある種の民族音楽的な要素を取り込んだクラブミュージックは結構良くて、サントラでも一枚買ってみようかなとは思わされた。

てなところかと。すっかりと日記をさぼってしまった。

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