ということで三寒四温の季節ですが、すっかり春めいて来ました。恐らく、今年度最後のポストになるのかなと思っております。今月は意外に展覧会を回る時間ができたので、幾つか思ったことなど。
・「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館
特に何もなかったです。別段好きな作家でもないですし。留学中に結構ベーコンは見る機会もあったもので。むしろ、メディアの大プッシュとの落差を感じたりですとか、帰り際に入場口で閉館30分前を切ってから展覧会を見たいと仰っている来館者の方と館のスタッフが結構もめているのをどう収めるのかなあということの方が気になりました。館のサイドからするとこういうイレギュラーな来館者に一々対応していると大変だろうなあとも思う一方で、札幌から出張中(仰っていたことが本当であれば)で、あの日のタイミングでしか見られないのであれば、お金を払うとは仰っていたので入れてあげてもバチは当たるまいと思いながら見ておりました。
・「アルフォンス・ミュシャ展」@森アーツセンターギャラリー
上のベーコンと同じ日に見に行ったのだけれども、少なくともベーコンよりは混んでいた。恐らくアーツセンターギャラリーはいわゆる貸館なんだと思うのですが、森美本体ではきちっとクロークがあるのに、下のアーツセンターギャラリーでは使えないというのはどうかと思います。僕は比較的プロフェッショナルな美術館来館者なので、一応入口のスタッフの方に聞いてみたらご厚意で52階のカウンターそのもので荷物を預かって頂けましたが、多くの人はそれには気付かないので、コートをきたまま鑑賞されていました。森ビルにせよ、主催の日テレにせよ、少し残念な対応です。森美術館という森ビル主催の展覧会か、それともメディアの事業部主催による展覧会かというのは、来館者には関係なくあくまで森美の展覧会にしか映りませんので。展覧会としては良かったです。この後のスタイケンもそうなんですけれども、僕自身が論文書いたりすることはないにしても、広告、視覚芸術、映画、舞台芸術のごちゃごちゃと混ざった具合というのは、演博勤務後ずっと面白いなあと思っている部分ですし、クラフトマンではなく、民族運動との接点で大壁画をかくミュシャのイメージはあまり知らなかったのでお勉強させて頂きました。ついでに言うと、これは間違いなくグッズ売りやすい展覧会だと思うのですが、商品開発は失敗していると思います。ターゲットを有閑マダムに絞りすぎ感が・・・。
・「エドワード・スタイケン展」@世田谷美術館
展覧会自体は素晴らしかった。しかしアクセスは相変わらず最悪だった。ここは完全に休日にデートで行く美術館だなと。結構忙しい日に時間を作って見に行ったのですが、祝日だったのでバスが来ない来ない。元々歩くの好きなので、一人で早足行軍で会場に。帰りに至ってはバス無し。もう本当に泣きそうだった。とはいえ、展覧会としては、イギリスで言うとTATE系のお洒落な美術展というよりは、National Portrait Galleryのより人物ベースの歴史的な展覧会という印象です。舞踊でいうと、イザドラ・ダンカンの写真であったり、映画であるとフリッツ・ラングであったりと重要な人物のポートレイトが多く、当時のNY、London、Parisの諸芸術ジャンルと越境の関係性が、スタイケンのある種ドキュメンタリスト的な性格から浮かび上がってくる感じが良いです。一方で、彼は『VOGUE』などに代表される商業写真家、編集者でもあり、会場に展示された過去のファッション誌からは、デザインに関心のある学生、研究者に対しても色々なヒントが隠されている印象です。アーティストでもあり、編集者でもあり、ドキュメンタリストでもあり、学芸員でもあるスタイケンの性格の重層性を思わされる展示でした。僕は楽しかったです。
・「ART FAIR TOKYO」@東京国際フォーラム
久し振りに足を運びました。どうしてもギャラリーのレセプションやその巨大版であるアートフェアは、内輪の人が楽しんでいる感が強くてこの数年参加していませんでしたが、僕は前身のNICAFの頃から足を運んでいるので少し懐かしいなあと。最後に行ったときは、小島聖を見かけたのですが、今回はone of Koshino Sistersをお見かけしました。どの見かけがどの方なのか僕には良く分かりません。仕方ないなあと思いましたが、やっぱり少しドメスティック感が漂うのは否めません。一方で、それでもここのアートフェアに出展する海外ギャラリーのモチベーションはなんなのかなあと思いました。特にアジアはまだしも、イスラエルとかアルゼンチンって、普通に欧州やアメリカの中堅ランクのフェアから行けばいいのにと思ってしまいます。一方で、若い頃は感じなかったことですけど、古美術も工芸もまとめて見られるのはむしろお得なのではないかと。普通に小山さんのギャラリーでダミアン・ハースト売ってるワンブロック先で、茶器とか売ってるのはむしろ面白いなと感じるようになりました。ガラパゴスだからこその異種混交感を楽しんでもいいのではと。目指しても恐らく無理なので、決してアート・バーゼルみたいな路線に向かわないで欲しいと思います。思い切ってVIPラウンジは茶室とかにしてもいいのでは。
以上好き勝手書いてみました。読者の皆さん、本年度も大変お世話になりました。引き続き来年度もご愛顧をよろしくお願いいたします。