とりあえず、今日初年度最初の学期の授業を一通り終えることができた。大学の内外の同僚の皆さん、研究仲間の皆さんに支えられて、あまりひどいボロは出さずに3ヶ月過ごすことができた(模様)。ということで、今回は院生や学部生と仕事しながら考えていたことを。
僕は当然院生指導ができるわけはないので、院生と付き合っていたというのは職場での学会受入の仕事でのこと。僕は新任教員ということもあり、院生的な関わり方と、先生的な関わり方の中間ぐらいの宙ぶらりんな立場で、結構イソイソと事務仕事をしていた。僕は比較的変わっていて、小学生から大学2年生ぐらいまではかなり強い意志で研究者を将来の職業として考えていたのだけれども、大学院を見据えてから迷いが生じて、20代の半ばが一番将来研究者になるかどうか迷っていた時期で、研究よりは美術館の学芸員のインターンや、友人と引き受けた初めての展覧会でこんな大規模な展覧会になっちゃうの?的な状態がすごく楽しくて、博士に出願する際や、留学のオファー待ちしている時期も、美術館の採用面接と二股かけていた(苦笑)。というわけで何を言いたいのかというと、あまり研究という意味では修士から博士前半の僕は良い学生ではなかったと思うのだけれども、今の研究なみに打ち込める仕事(当然ノンプロなのでお金は大して出ない)を、本気で楽しがっていたということ。そしてそのときの仲間は、学部時代からの本当に良い仲間で、数年に一度ぐらいの単位で現在まで一緒に仕事ができているのが本当に幸せだなと。どんな学会でも、学会受入の手伝いというのは楽しいことが多いとまでは言えないと思うので、今回一緒に仕事をさせて頂いた院生の皆さんが(例外なく事務能力高過ぎ)、僕らのように良い仲間として、彼ら自身の願う仕事をともに作っていけたら素敵だなあと。
一方で、先月末に久し振りにいわゆる「ポピュラー音楽」のライブに行ったのだけれども、これは間違いなく学部生と話をするようになったからで。音楽が好きだったり、ファッションが好きだったり、踊るのが好きだったりする学部生の皆さんの話を伺いながら、かなりこの数年僕自身が「好き」だと思うものジャンルのなかで、美術展とダンスへ偏って時間を割いていて、同様に好きだった映画や、ライブに行かなくなっていたんだなということに気づかされて。と思ったので、自分が学部生の頃に好きだったバンドやグループをボーッと調べていたら、なんとライブチケットが意外と簡単にとれてしまい。どうしても仕事よりの音楽(アートやダンスとの接点があるもの)を聞くことが多くなっていたので、純粋にZepp Tokyoのような大きなハコで多くの人と時間を共有する感じが久しぶりで、これがこの仕事をしたいと思った一つの大きな理由だなあと改めて認識することになったわけである。
僕ぐらいの年の人間が言うことではないのだと思うけれども、特にアート、デザインといった「クリエイティブ」と呼ばれる業界の人にとっては、20代の後半ぐらいから「感性死にはじめる感」はそれなりにあるはずで。例えば単純に、学部生の頃であれば「コンテンポラリー・アート」というタイトルがつけば、美術館だろうが、ギャラリーだろうがどこでも足を運んでいたのが、年齢とともに一定の選別をはじめたりする自分がいるわけで。こういうことを意識するとき、感性が濁りはじめていると強く感じる。だから、感性の老化みたいなものは否めないにしても、日常的にまだ二十歳前後の学生とのやりとりのなかで新しい刺激を与え続けてくれるこの仕事というのは、本当に僕にとってはありがたい仕事だなと。日本だけではなく、今の政治状況も社会状況も総論としては決して大学生にとって優しい状況ではないにしても、この中年の(手前の?)オッサンが、何をお手伝いできるのかなと思う宴の後の夕べなのである。