昨年関わっていた仕事の紹介です。2010年に開催された早稲田メディア・シティズンシップ研究所でのシンポジウムを元に、その成果を書籍にまとめて『1985/写真がアートになったとき』が出版されます。写真史家の金子隆一さんのインタビュー、およびその前後の短い原稿を担当させて頂きました。
この書籍は、僕よりもさらに若い共著者、特に編者のお二人を中心に五年間かけて形にされた仕事なので、なんで突然最後になって僕が呼ばれたのかは未だに不明ではあるのですが、写真が好きで学部生から修士の間は写真部に所属させて頂いて一個人としては、自分が好きだった写真業界にちょっとした恩返しができたのかなとは思っています。
紹介通り、僕が担当したのは写真史家の金子隆一さんのインタビューです。その対象自体「写真」なのですが、どちらかというと僕が金子さんについて関心を持っていたのは「個人が蒐集すること」の意味です。「写真美術館」などという素っ頓狂な発想が社会に広まる前から、個人で写真集、写真雑誌を蒐集されてきた個人であり、なおかつ途中からは公的なミュージアムの職員として「写真」そのものの収集にも携われるようになった方が、どのような感覚で「モノ」と向き合ってきたのかを知りたかったということがあります。
細かな内容はもちろん書籍を手に取って頂きたいので書けませんが、恐らく今後僕の研究の軸の一つになる、「あつめること、もしくは保存することと社会」といったテーマを考えていくうえでは、幾つものアイデアがつまっているインタビューなのだろうと感じています。完全な学術書路線ではありませんので、単純に写真が好きな方や、学部生で日本の写真史にご関心がある方などは、値段も手頃ですし良書だと思います。デザインも良く鈍器ほどの厚みもありませんので、パートナーやご友人をご自宅に招く際のインテリアとしても優れた一品です。