2012.02.21

電子化の行き着く果て

先週後半から今週にかけて色々と仕事では考えさせられることがあったのだが、金曜日に國學院図書館での資料収集が早めに終わったので、忘れていると終わってしまう恵比寿映像祭に足を運んでみた。その過程で感じていたことをつらつらと。

多分、始まってから毎年恵比寿映像祭には参加しているのだけれども、確かたまたま初年度か二年度に当時写真美術館で学芸員をしていらした辻さんの紹介でレセプションに参加してからはとくに毎年行かなくては感が強くなっている。毎年比較的いい展示なんだけれども、今年は僕にはいいなあと思う作品がなおさら多かった。今日の毎日新聞の夕刊に展評が出ていたけれども、僕とは大分評価の軸が違う。現代的でテクノロジー依存度が強いものを積極的に評価していて、僕にとっては「映像祭」としての批評としてはあまり共感を覚えられるものではなかった。

最初に言及するのは直球で見ていて気持ちよかったユェン・グァンミンの作品。僕の知っている今の台湾だったし、ストレートにならないミニマル感は良かったと思う。但し、美術批評家からすれば、いわゆる良くあるビデオインスタレーションと評価されても仕方ないだろうなとも。一方で、僕が面白いと思ったのは、東京シネマの一連の作品と、サラ・モリスの作品。これはどうして良かったのかというと、映像の持つ歴史的な広がりの縦糸、横糸が意識できるかなあと思ったから。前者ではキャプションには「科学映画」と書いてあった気がするのだが、歴史的にミュージアムと視覚メディアとの関係性を見ていくときに、幻灯からスライドと映画へと派生するなかで、近代の視覚メディアが持っていたモヤモヤ感がそれぞれ、教育と娯楽機能に分化していく過程が良く分かるのだが、そのことを思い出させてくれる好例だと思ったから。そして、後者はスクリーンの中は結局何者でもない感を思い出させてくれた気がする。映像の中身ってもはや昨日を失った廃墟としてのモダニズム建築で、ある種の虚ろさとそれがはらむ美しさみたいなものを感じてしまったのである。多分、米田知子の写真を見ているときの感覚に近いかと。

実は今回のタイトルは、ここからの話に対してつけようと思っていたわけで、たまたま時間があってスクリーニング作品の『Page One』の上映を見ることができた。これは、今回のスクリーニング作品のなかでは一番楽しみにしていたもので、2007年から現在にかけてのNY Timesの様子をtwitterなどに代表されるウェブ依存型のジャーナリズムとの関係性で見ていく作品。単純に作品としてクール。問題設定も英語圏らしくて、紙媒体は今後も必要か不要かという問いと、現代社会のメディア環境においてそれでもNY Timesがトップを走っているといわざるを得ないのは何故かが上手く描かれていたと思う。僕は何度か記事も読んでいるんだけど、David Carr本人とか普通に格好いい親父で(イースウッド的に)。まだ希望の企業で働くことへの幻想をもとに駆動できている会社で素朴に映画として良かった。それを見ながらつらつら考えていたときに、研究者にとっての電子資料の意味をボーッと考えていたんだけど。僕はD2からウェブ上の専門誌で連載記事を書く機会を頂いたり、そもそもまだ教員でもないのにこのように個人サイトを持っていたりと、かなり早い時期から電子媒体と紙媒体の間に本質的な差異を書き手として見いださなくなっているのだけれども、今僕らはどうすればいいのだろうと改めて考えていました。例えば、近代以降の歴史を考える時に、まず最初に当たる資料が新聞(紙媒体のシンボル)なわけだけれども、これって恐らく紙媒体だったことに依存していたわけではないと思うのです。つまり、一番定期的で大量の情報を一貫して掲載してきた形式が新聞という形をとっていたわけで、この「一番定期的で大量の情報を一貫して掲載してきた」という点にこそ、資料としての優位性が宿ると。だとすれば、現在我々が生きている環境を見回していくなかで、どの形式にその優位性が宿っているかというのはそう簡単に答えは出ないのだろうなと。同時代の情報量という視点では、ウェブ上の情報は紙媒体に対して優位性を持っているのかもしれないけれども、一方でそこで形式としての一貫性を構造として与えているのは、実はテレビや新聞のウェブサイトに依存してきたからという側面もあるわけで。攻殻機動隊的な意味でのウェブ世界にはある種のアルゴリズムは存在していても、構造は希薄なイメージがあって、しかし構造がないと全体を認識できない僕らにとって、この大量の情報の一定の構造化という点では、以前としてウェブメディアに対しての古いメディアは常に進化を重ねてきているのだと思う。50年後の社会学や近過去の歴史学者が現在を語るとき、どこに優位性をおいて資料を選択するのかは80過ぎ(生きていれば)の僕の楽しみでもある。

この数日間あまり寝られていないせいで、全く書き散らす感じになってしまったけれども、まあこれもご笑覧下さればと思うのである。最近すっかりブログもサボり気味だったし。

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