2013.05.21

つのる隣人愛

良く考えると前回のポストで、この話を書いた方が良かったのだろうと思う。ちょっと授業準備に倦んだので書いておこうかなと。下に追加したのは、これから書く展覧会の一作品の写真。(こちらとしては展覧会の応援も含め写真を掲載しました。著作権上の問題があればご連絡下さい、迅速に削除いたします)

寒々と雨が降った5月の半ばの週末に大船の母校の学園祭を見た後、特に知り合いにも会わなかったので久し振りに横浜をブラブラすることにした。ここら辺まで来ると、鎌近か横浜美術館のどちらかには寄りたい気分になるのだが、閉館時間を考えるとどうやら横浜美術館にしか向かう時間はなかったので、『Welcome to the Jungle: 熱々東南アジアの現代美術』展を見てきた。

東南アジアで現代美術というと、リクリット・ティラバーニャかエスニック感漂う伝統芸系のものをイメージする方が多いと思うのだけれども、今回の展示は僕個人はとても楽しめた。結構ギリギリの時間で入ってしまったので、少し焦りながら見なくては行けなかったのが残念だったぐらい。僕が今回の展覧会を楽しめた最大の理由は、「アート」では無い文脈で十分に楽しめたから。僕は基本的には、キャプションで一々作品のコンテクストが説明されないと、「AHA」体験ができない現代美術の作品は総じて嫌いなんだけれども、今回はアートとして見せるための文脈ではなくて、むしろ「ソーシャル・ドキュメンタリー」的なコンテクストだけで十分楽しめたというのが大きい。とりわけ、全編は見られなかったのだけれども、ザイ・クーニンの作品はきわめて社会的批評性に優れた映像だったと思う。その良さは、アートなのかNHKスペシャルなのかということを問わず、十分に良いものだったし。後半の市井を被写体とした写真群も変に欧米の現代写真のコンテクストに引っ張られるわけでもなく、土着性に過度に固執するわけでもなく、素直にいいなと思える作品だった。

上記のようなリアルな東南アジアの現実とはやや趣きをことにする本当にコンセプチュアルな作品も、変に現代思想などをいじらずそれでいてコンセプトが出ている感じにも好感が持てた。あまりきちっと読めていないので、こういう私的なブログでしか書けないのだが、ヨーロッパの現代美術の絶え間ない差異化の一つのキャッチフレーズとして「関係性の美学」が出てきて、そこに無理やりティラバーニャのようなアートシーンにおける周縁のアーティストが組み込まれていくのがあまり好きでは無くて、そうではない磁場を感じさせてくれる点は素直に好感が持てた。森美のような場でややヨーロッパティストで見せられるよりは、僕は今回の展覧会を推す。

僕は留学から戻って、複雑な歴史的な問題を抱えていることは認めながらもそれでもアジア人の一人でしかないと感じて以降、年々東、東南アジアに対する関心が強くなっているのだが、今回もそんな「隣人愛」を増すのに十分な展示。横浜美術館の前庭はかなりスペースがあるので、願わくば会期中晴れた日は東南アジア各国の料理の屋台でも出ると、それこそ屋台文化である東南アジア感が出て美術館の事業トータルとしても素敵だなとは感じた。という珍しく直球の展評でした。

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